りんどう峠

ニュースでりんどうの花を紹介していた。

この歌を思い出した。

ネットで検索していると次のような記事があった。

 

「りんどう峠」

作詞西条八十

作曲古賀政男

りんりん りんどうの花咲くころサ
姉サは馬コで お嫁に行った
りんりん りんどうは 濃むらさき
姉サの小袖も 濃むらさき 濃むらさき
ハイの ハイの ハイ

りんりん りんどうの花咲く峠
姉サは馬コで あとふりかえる
姉サに行かれて なんとしよう
いっしょに柴刈る ひとも無い ひとも無い

ハイの ハイの ハイ

りんりん りんどうは小雨にぬれる
わたしゃ別れの 涙でぬれる
りんりん鳴るのは 馬の鈴
姉サは峠に 消えてゆく 消えてゆく
ハイの ハイの ハイ

~~~~~~~~~~~

作詞は、西条八十氏 、過日の「夕笛」につづきの御登場ですが、歌謡曲、童謡にも、多くの作品を残した、実に偉大な詩人です。

作曲は、歌謡史に名を残すメロディーメーカー、古賀政男氏、とくれば、まさに、最強コンビの生んだ傑作作品ですね。

なんとも、古い歌で、お若い方は、まず、聴いたことなど、ないでしょう。

21世紀の現在から思えば、隔世の感がある牧歌的な光景をえがいた詩界ですが、

東京タワー、万博等々…「昭和回顧ブーム」の感のある今日、

こういう歌も(たまには)いいのでは。<笑>

ところで、まず、「りんどう」の解説から、始めなければならないのかもしれませんが、

これは…、「花」の名前です…。どんな花かは、みなさんで、お調べください。<爆>

読んでおわかりのとおり、姉妹―それも、おそらく年の離れた―の別れの歌ですね。

実に季節感、色彩感があざやかな風景をバックに、それとは対極の、切ない離別に涙を流す、姉と妹が描かれています。

1番、2番、…と歌詞の進行につれ、嫁いでいく姉の姿が徐々に、遠ざかっていく。

立ち尽くして、見送る妹は、悲しくて悲しくて、しかたがない。

しかし、詞の最後の、「合いの手」、

「ハイの ハイの ハイ」―この箇所を歌う島倉さんの、明るさはどうでしょう!

『それでも、生きていかねばならない。明日に向かって』

そう強く決心した妹の、「ハイの ハイの ハイ」なのであろう。

つまり、この曲における『救い』の全てが、この「ハイの ハイの ハイ」に凝縮されているのですね。

「りんどう峠」が発表されたのは、1955年のこと。

まだ、戦争の傷跡は、町にも、村にも、そして、当時の人々の心にも、はっきりと残っていたことでしょう。

でも、国民の多くが、この、島倉さんの「ハイの ハイの ハイ」によって、勇気づけられたに違いありません。

そして、日本は、やがて、「高度成長」の時代へと突入していく…

農村の風景・生活も、また都市も含め、国の全体が、大きく変貌を遂げていくことになるのですが。

 

この楽曲の試聴HPは、私には発見できませんでした。

ただ、こんな動画サイトがありましたので、どうか、ご鑑賞のほどを。

    ↓

ナツメロ大全集 | りんどう峠 島倉千代子

いかがでしょうか。島倉さんの、ハイ・トーンが美しい歌ですね。

島倉千代子さんのデビュー曲にして、大ヒットした「この世の花」は、

当時の「のど自慢大会」などでも、こぞって歌われた曲でしたが、

この「りんどう峠」は、どうだったのでしょうか。

最高音は、「E」くらい、

最低音は、合いの手、「ハイの ハイの ハイ」の直前、

「濃むらさき」の「き」の部分、「A」くらいです。

ということは、この歌、非常に音域が広いのです。

そのこともさることながら、民謡の旋法を取り入れた節回しが難しいし、また、ブレス(息継ぎ)の箇所もしっかり覚えないと、大変です。

素人が歌うには、難曲ですね。

 

ところで、この「りんどう峠」が発表されたのは、島倉千代子さんのデビュー年ですから、

実に、彼女が17才(!)のときのことです。

これをもってしても、島倉さんもまた、まぎれもない「天性の歌手」であることは、明らかでしょう。

さて、冒頭の野村監督の言葉に戻りますが……

「王や長嶋がひまわりなら、オレはひっそりと日本海に咲く月見草」

最近、この言葉を耳にして、ふと、思ったのですが、

「天才歌手」の名をほしいままにした、美空ひばりさんと比べ、島倉さんの場合、ちょっぴり、“さみしい”感もあるのです。

(おそらく…ですが、ご本人は、こんなこと、微塵もお考えでないとは思います)

「昭和の時代における、最大、また、最高の流行歌は、美空ひばりの、『リンゴ追分』である」

という言葉を聞いたことがあります。私もそれを、否定するものではないですが、

が、しかし、この「りんどう峠」も、それに、比肩し得る名曲である、と私は思うのです。

歌詞も、メロディーも、また、島倉さんの歌唱も、素晴らしい。

女性演歌歌手は、過去も現在も、大勢いらっしゃいます。

でも、島倉さんのように、高音域を綺麗に出せる歌手は、今、思いつきません。

淡谷のり子先生、森昌子さん…くらいかな、いらっしゃれば、教えてください。

そう、ひばりさんのファルセットもきれいですよね)

また、この歌、キーを下げて歌うと、なんとも、“気品“が失われてしまう。

「ヒーリング」というフレーズが、もてはやされている現代、

いわば、島倉さんこそ、わが国における、“元祖:癒し系歌手”といっても、いいかもしれませんね。

島倉さんには、これからも、ずっとずっとお元気で、私たちに、その美声をお聞かせいただきたく思います。